記憶喪失の少年と、賞金稼ぎの娘っこの日記。
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とん、かん、とんとん、かん。
じゅうっと上る湯気、叩かれるたびに飛び散る熱。
「おいベガ、ちょっとこっちゃ来い」
「はいはい、今行くのだよ、ちょっと待って」
「なぁに、親方」
「こりゃあ、お前が持ち込んだものだったか?」
「……、そうだけれど、なぁに?」
「なぁに、じゃねえだろう、このクソガキ」
「いた、痛い痛い痛い。親方の手ゴツイんだから、やめてよ。」
「ほら、さっさと金払え」
「ちぇ。またばれちゃった。」
ちゃりん、とダルクの音。親方のゴツイ手の中に消えた。
毎度、そう言うと親方は歯を見せて笑う。ふわりと紫煙が宙を舞う。
「俺を欺けるとでも思ってんのかお前。」
「あんまり、思ってない」
「だろう。正しいぜ、それ。」
いっぱいに吸い込んで、吐き出した。紫煙の奥で炎が燻ぶる。
ちらりと僕に一瞥をくれると、視線を逸らした。
「だが、ベガ」
「……なぁに?」
「お前みたいなモンが、剣なんて何に使う」
「使うのは、僕じゃないよ、友人。」
「………、…いくつだ」
「4つ上」
「大して変わんねえじゃねえか、お前と」
「……4つも上だよ」
「俺らからしたら、変わんねえんだよ」
そう言って親方は、ぼすぼす乱暴に頭を撫でた。帽子がずれる。
帽子を直して親方を見上げると、親方は仕事道具を手に、僕に背を向けていた。
かん、かん、とんとん、かん。
また同じように、響くおと。
何気ない日常の、他愛もない会話。