光など、届かない。
そんな下層に朝を告げるものは何か、我が家はこれ。
カンカンカンっ、と、耳障りすぎる音。
金の髪を揺らす彼女が手に持っているのは、フライパンとフライ返し。
「リンシィ、もうちっとマシな起こし方は無いんかい」
「おばさまが声掛けて起きれば、こんな煩くしませんヨ」
エプロンを外して壁に掛けた。焼けたベーコンとパンのかおり。
「ちゃっちゃと食べて下さいネー、これからお仕事なんデスから」
「んじゃ、行ってきまス、片づけお願いしますデスよ」
「およ、もう行くんかい、働き者やのぉ」
「誰のせいだと思ってるんデスか?」
「さぁ、誰のせいかのぉ」
「昨日も隣のおいちゃんと浴びるように飲んでたたじゃないデスか」
「悪い悪い、まぁ酒はあたしの生きがいさね、奪わんといて」
しょうがないデスね、と呟くと大剣を背負った。
きぃ、と扉を開けた。薄暗いゴミ溜めの様な、此処は下層。
「なぁ、リンシィ。お前、母親に似てきたなぁ」
あまりにも突然だったので、瞳を瞬かせた。
「…当たり前デス、あの人の娘デスから。私は。」
扉が閉じてから叔母が呟いた言葉は、クリンシアには届かなかった。
PR